電気新聞 特集記事『テクノロジー&トレンド』 (2022年2月14日掲載)にてご紹介した『第一線現場』向けのXR適用事例(紙面未紹介の事例も含む)について詳細にご紹介します。
XR事例紹介
記事掲載のXR適用事例
JFEエンジニアリング様
(ARの適用事例)
建設・建築・製造の現場での運用が活性化してきているのが、施工/製造状況チェック・結果記録へのAR技術の活用である。
橋梁(大型構造物)の設計・施工の業界では、タブレットを用いて3次元CADデータを施工中の橋梁にAR重ねて表示させ、目視による施工チェック(穴開け・締結部品・ブラケットなどの有無)を行っている。実現場での施工時に設計・施工ミスが発覚すると、工場までの部材の返送・加工・再塗装・現場への再輸送など大きなコスト損失が発生するため、工場での仮組み状態でこのARチェックを行う、という活用が始まっている。
大気社様
(MR/ARの適用事例)
空調設備の設計・製造・管理業務において、見えないモノの見える化を図るという取り組みであるが、まさにXR技術は見えないモノを可視化するためにうってつけの技術である。
具体的に言うと、空調設備の機械の稼働状態、例えば温度のPLCによるリアルタイム取得・空間の部位ごとの温度計測・空気の流れの解析――により情報を収集。これらをAR/MRで可視化し、今まで不可能であった目視による検討・判断が可能となった。また、XR技術により、装置の稼働状態、特に異常発生時の状態とデータを、実空間の場所にひもづけて管理できるため、故障発生場所・箇所への誘導・故障箇所の過去の不具合データ/対策作業結果データのレコメンド表示が可能になるなど、設備保全効率化にもつながってきている。
このような現地現物情報の管理/利活用はデジタルツイン・メタバース(リアルメタバース)の世界と言える。
関電工様
(MRの適用事例)
電気工事の現場の大半は、決まった場所での定期点検などの業務よりも一品一様の現場作業が多く、事前に作業手順を定義・マニュアル化して現場で活用することが難しい為、ツールとしてのMR活用が多い。
関電工では、電気盤の異常発熱による火災事故を防止する為にサーモカメラを用いた点検業務を今までも行なってきたが、チェック漏れ防止・点検記録確実化の為、MRゴーグルにサーモカメラを接続して熱画像をホログラム可視化する試みを始めている。
MR技術の適用により、装置の部位ごとの正常温度範囲データを現物の特定箇所にひもづけて管理できる。現場ではサーモカメラの熱画像がリアルタイムに解析され、温度異常部位が視界に入るとホログラム上にアラートと共に熱画像が表示され、撮影・帳票記録される。また、現場作業者が解決できない事象が発生した際には、遠隔事務所をPC越しに呼び出し、MRグラスのカメラ映像(熱画像などのホログラム表示込み)を見せながら会話し、後方支援を仰ぐことができる。この際、遠隔PC画面からは、映像越しに現場の実空間に線や矢印を書く・さらには手が塞がっている現場作業者の目の前に必要な図面などを表示させることができる。
まさに空間を把握しているMR技術ならではの活用例であり、サーモカメラなどのIoT機器をMR技術によって可視化しているという「接着剤としてのXR技術活用」の好例である。
記事未掲載のXR適用事例
サン・シールド様
(ARの適用事例)
下水道工事においては、シールド推進工法技術を用いて地上になるべく影響が出ない掘削を行う手法が増えているが、その場合でも地上に工事関連機器を設置する必要がある。
一品一様の現場における工事関連機器の配置レイアウト検討作業では、事前に図面化をしての設計検討には手間がかかるため、3D-CADデータと現実空間の3Dスキャンデータの併用によるARレイアウト検討が進んでいる。
実現場でのレイアウト検討データは、MR(最新のAR=MRである)の特性である空間管理されている座標情報及び撮影画像として記録し、報告書や役所への届出資料の作成・自動生成への活用が可能となっている。
日比谷総合設備様
(360度映像VRの適用事例)
VRは3次元CG製作コストがネックとなり活用が進まない傾向にあったが、最近ではCGではなく360度カメラ画像を用いたVRの実務適用が進み始めた。自身で気軽に撮影しVRコンテンツ化できるため、日常使いが可能となっている。
施設の天井裏のスペースの配管などの点検作業では、一度に多人数が天井裏に入ることができない。このように、普段入れない場所での研修が必要な現場では、360度映像によるVRは大きなメリットを見出せる。
また、遠隔拠点からの360度VR空間参加も可能であり、全国4拠点からの遠隔参加による新入社員教育を毎年実施している。
現場空間にバーチャルで入り込むVRの活用は、座学技術研修であるがOJTと同等の効果が期待できるとの意見が出ている。
サン・シールド様
(360度映像+CGのVR適用事例)
前述のAR適用事例に加え、サン・シールド様では下水道工事業務において、360度映像VRも活用している。
一品の現場において、現場のデータを全て3D化することが困難な場合、360度カメラ撮影画像と3Dモデルの組み合わせ利用も効果的である。
ポケクエ × 各社様
(AR × 4本脚ロボット適用事例)
施設の巡視点検などの業務シーンにおいて、省人化・コロナ禍によるリモート対応などのニーズが高まってきており、現場におけるロボットの活用が注目されている。
本事例は、実証実験段階であるが、ポケクエが数社と個別に取り組んでいる事例である、(動画は開発テスト中の様子)
安価な4本脚ロボットを選定したが、今後も機体を別のロボットに入れ替えて利用できる様ロボット側には極力カスタマイズしないという方針の元、ARアプリケーションがロボットの目・頭となってロボットを操る仕組みを開発した。(ARアプリケーションの応用事例)
設定された巡視ルートをロボットが巡回しながらAR撮影を行うことで、建設現場の施工状況を画像で予実チェック(設計データと現場施工状況の重畳表示)することが可能となった。(将来的には画像認識による自動判定までを予定)